バレエのレッスンにはなぜ大きな鏡があるのか

 

鏡を効果的に使う

2015年から「大人からでもできる初めてのバレエ」というワークショップをするようになって気づいたことがある。私は今まで当たり前のように生徒がたくさんいる教室で大きな鏡の前でレッスンを受けてきたわけだけども、その稽古場での立ち振る舞いや立ち位置の取り方、鏡の使い方、先生の見方、他の生徒との距離感の取り方、自分が踊っていないときの待機の仕方、先生がアンシェヌマン(振り入れのようなもの)を出しているときの受け方、そういったものから初めての方ってわからないんだということを私が理解していなかった。

先生が踊りの順番や注意をしているとき、どこを見ればいいのか。

先生の実体を目で追うばかりでなく、場合によっては鏡ごしに見るといい。私は大概、先生の斜め左後ろに陣取ることが多い。なぜかというと、私の効き目は右目なので、鏡越しに自分と先生が横並びに映ることで瞬時に自分と先生を見比べてフィードバックすることができる。パッと一瞬視線を持っていた時に脳に残りやすいのが左に立った時…ということになる。

また、鏡で何を見るのかってこともかなり重要。ぼんやりと自分のボディラインを眺めているのでは意味がない。振りによって見るべき骨の位置が異なるのだけども、体の各パーツの位置をアライメントなんて言う、これが正しい角度や位置にきているかってことを見ている。また、舞台で踊るために練習しているわけなので、稽古場で理想の形で踊れても舞台で踊れないのであれば意味がない。つまり、鏡のない舞台上で踊れるようにするためには、視覚的に体の正しい位置を捉えた後は感覚的に(筋肉に覚えさせる=マッスルメモリー)把握、認識、記憶していく練習が必要なわけだ。そして自分の感覚と実際の位置のズレを最小にしていくために鏡を使うのだ。

案外、「自分はこう踊っているつもり」と言うものと実体は遠くかけ離れていることが多い。イメージしたものをできる限り早く正確に再現できるかって言うのが、ダンスのスキル的な上手い下手なのではないかと思う。脳内イメージを再現させると言うこと。

 

バレエが上手くなりたかったら

で、バレエ初心者の方に限らず、このバレエのイメージが貧相だとバレエって上達しにくいものだと私は思っている。バレエに限らないかもしれない。

どのスポーツでもイメージってとっても重要。ハードルや走り幅跳び、高飛びが得意競技だったのだけど、助走から跳んだ時のイメージは0.1秒ごとに写真を撮られたとしてもそれ通りの動きのイメージがあるくらいにしておくと、ちゃんと結果を出せるものだ。

バレエは特に形式美。形の美しさにストイックだ。アラベスクの理想の形をよーーーく脳内にインプットしておくといい。アラベスク、アティテュード…腕のアンオーやアロンジェ、グランジュッテやソディシャでどう跳びたいのかって言う一つ一つのイメージが明確であると鏡を見る意味がでてくる。

イメージが自分の中で熟成されてくると、そのうち自分の体や人の体を見た時、骨で見えてくるようになってくる。どの関節から動くとその理想のところにいけるのかとか、今どこから動きが生まれてるのかとか、どこに重心や軸があるのかって言うのまで一瞬で見えるようになってくると、その動きを自分に落とすのもすぐにできるようになってくる。

 

振りを覚えるってどうやっているの?

振り覚えが悪いのは多くの人がぶち当たる壁だと思う。私は、振り覚えが異様に早い方だ。どうしたら早くなるのかと言うと、とにかくたくさん数覚えることとしか言いようがない。

けれども、上に書いたようにコツみたいなものはあって、特に初心者の人には役立つかもしれない。振りを覚えるときに、「右手は上、左手は横、その時膝を曲げて…」といった感じで体のパーツをバラバラに一つ一つ覚えようと思うと本当に覚えられない!!その振付師さんにもよるのだけど、一個絶対重心や流れがあって、それがどう動いているか音楽のどの音にそれを乗せているのかを観察すると振りが振りじゃなくなり、踊りとしてスイスイ体に入ってきたりする。(だから、私は自分にあう振付師さんの踊りじゃないと何度やっても覚えられない振りもある。合うというのは、音楽無視した人の振りは踊れないって意味で)

 

これはクラシックバレエしか踊ったことがなかった私が、初めてヒップホップを習ったときに特に体感したことだ。ヒップホップに関してはど素人なのにも関わらず、トップレベルの日本のシーンを牽引するようなダンサーさんのゲロ吐きそうな振りを踊った時、全部すっ飛ばして、そのかたの体の揺れと音楽の流れだけに意識を集中させてみて、初めてやる動きでも、バレエで上げがちな重心を膝や腰に落として、音の取り方もボールが弾むように落としていく。したら、振りを覚えなくても踊れちゃったのだ。

 

その時、初めて!あぁ!!!ダンスってこれだよね!!!!って知った。ヒップホップを習ったのに、なぜかバレエも上手くなった。ジャズも。ジャンルが違うことが怖くなくなった。ダンスはどれも同じ!って感覚を持つようになって。もっというと、もしかしたら表現全て、この感覚でいけるんじゃないかと思っている。

 

鏡を通して本当に見たいもの

今日一番言いたかったこと。

あんなでかい全身鏡を見ているとついつい欠点ばかり見えてしまうのだ。ボディラインを筆頭に、この甲のない脚が嫌とか、アンデオールが全然できていないとか、ジャンプが低いとか…高いレベルのダンサーになればなるほど、欠点を見つけるのがどんどん上手くなる。

でも、本当に見るべきことは、もっと目に見えないものなんじゃないかと私は思う。それにはいい先生に出会う必要があるんだけども。そうすると踊り心というか、そいったものを見せてくれる先生っていうのがいて、「あぁ、私は好きでダンスを踊っていたんじゃないか」と当たり前のことを思い出させてくれる。

上達には鏡を見てフィードバックさせてすぐに修正できる力も大事だけども、表面上のネガティブなことに囚われすぎないようにするのも大事である。

そんなことを忘れずにレッスンに励もう!!!